保護猫をペットとして迎え入れる人が増えてきています。里親募集サイトや保護猫の譲渡会などで引き取ることのできるネコちゃんは、去勢・避妊手術がまだされていない場合もあります。
その理由は、月齢が手術をするに満たない小さな子猫のことも多いからです。成猫でも、前の飼い主さんから飼育放棄をされていたり、捨てられてしまったりしたネコちゃんは、去勢・避妊手術さえもしてもらえていないというパターンが見受けられます。
あなたがもしも保護猫をペットに迎え入れるならば、ぜひとも去勢・避妊手術を受けさせることを強くおすすめします。
目次
なぜ猫に去勢・避妊手術が必要なのか
オス猫の不妊手術を「去勢手術」、メス猫の不妊手術を「避妊手術」といいます。なぜ室内飼いのペットであるネコちゃんに、去勢・避妊手術を受けさせる必要があるのでしょうか?「人間の都合で、ネコちゃんを子猫が産めない身体にさせてしまうことはかわいそうだ」とか、「麻酔によってネコちゃんが亡くなってしまうリスクもあるじゃないか」という意見も存在しています。
しかし、去勢・避妊手術はペットのネコちゃんにとって、かわいそうなことではありません。とても大切で、必要なことなのです。
ペットとして室内飼いをするネコちゃんでも、去勢・避妊手術をしない状態だと、発情期は必ずやってくるのです。スプレー行為(臭いの強いオシッコを壁や家具などにかけるマーキング行為)もしてしまいますし、異性のネコちゃんを呼び寄せるために昼夜問わず大きな鳴き声をあげるようになります。こうなると飼い主さんも非常に困ってしまいますが、ネコちゃんにとっても、発情期に交尾ができる相手がいないことは、大きなストレスになります。
そして、去勢・避妊手術の際の麻酔の後遺症などが心配ならば、手術前に検査をして麻酔に耐えられる身体であるかどうかを判断することも可能です。そもそも、去勢・避妊手術での麻酔によって亡くなってしまうネコちゃんは決してゼロではありませんが、ごく稀なパターンといえます。動物病院も手術には細心の注意をはらってくれるので、飼い主さんが麻酔のことを心配しすぎるのは考えものです。
また、オス猫とメス猫を同時にペットにする場合には、必ず去勢・避妊手術を受けさせるようにしましょう。ネコちゃんは、たとえそれが兄妹であっても親子であっても繁殖してしまいます。それに去勢・避妊手術を受けさせると、ネコちゃんに多い生殖器の病気(乳がん・子宮がん・精巣がんなど)になるリスクをなくしたり、減らしたりできます。病気予防のためにも、去勢・避妊手術をすることは大きなメリットのひとつです。
多頭飼育崩壊って何?
保護猫を引き取る際「仲の良い兄妹猫を、2匹一緒に引き取ってくれるご家庭が優先」というような譲渡条件があることがあります。仲良しの兄妹を引き離すのは忍びないですし、2匹で一緒に遊んだり、くっついて眠っていたりする姿を見るのも微笑ましいものです。
しかし上でも書いたように、ネコちゃんは兄妹でもかまわず繁殖し、どんどん増えてしまいます。生まれた子猫たちも、成長すれば発情期を迎え、また繁殖を繰り返してしまうでしょう。ネコちゃんは交尾をすればほぼ100パーセント妊娠し、一度の出産で3~5匹、多いときは8匹くらいの子猫が生まれてくることもあります。
こうなると、もう手が付けられないくらいにネコちゃんが増えてしまい、ペットとしてみんなを適切に飼育することは不可能になってしまうことでしょう。これが「多頭飼育崩壊」と呼ばれる危機的な状態です。こうなってしまってから「最初に保護猫を引き取ったとき、ちゃんと去勢・避妊手術を済ませておくべきだった」と後悔しても遅すぎます。
そして、近親交配で生まれてきたネコちゃんには障害があったり、身体が弱くて短命になってしまったりする場合も多いのです。せっかく保護猫をペットにして不幸なネコちゃんを減らそうとしたのに、逆にかわいそうなネコちゃんを増やしてしまっては、本末転倒だといわざるを得ません。
去勢・避妊手術にかかる費用
オス猫の去勢手術費用はおおよそ5,000円~2万円、メス猫の避妊手術は卵巣のみの摘出で1万円~3万円くらい、卵巣と子宮を摘出する場合は1万円~4万円くらいが一般的な相場です。手術前の検査をするか、日帰り手術なのか入院させるかなどでも料金は変わるので、動物病院で納得がいくまで聞いてみてください。
自治体によっては、ネコちゃんの去勢・避妊手術に助成金を出してもらえることも。だいたいは、1匹につき3,000円~5,000円くらいです。お住まいの市区町村の保険所に問い合わせてみると、教えてもらえます。
まとめ
このように室内飼いのペットである保護猫でも、去勢・避妊手術は必要なことです。「1匹飼いだから平気」という人は、脱走させる可能性がゼロだと言い切れるでしょうか?脱走したメス猫を発見したときには、既に妊娠していたという話はよく耳にすること。オス猫ならスプレー行為もありますし、外で交尾をして猫エイズにかかったり、発情期のストレスによってケンカをして大怪我をしたりして戻ってくることも考えられます。
不幸なネコちゃんを減らすために、保護猫の飼い主さんになったのだということを、ぜひ忘れないようにしてくださいね。
参考: