盲導犬とは、視覚障害を持つ方を道に迷うことなく安全に誘導する犬のことです。
盲導犬を連れている姿を街で見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
日本に盲導犬が登場したのは、1939年にさかのぼります。
ドイツから4頭の盲導犬が輸入されたのがはじまりです。
当初は外国産の盲導犬ばかりでしたが、日本国産の盲導犬は1957年に誕生しました。
現在の日本国内には11の盲導犬育成施設があり、どの施設も国家公安委員会の指定を受けています。
盲導犬になれる犬種はラブラドールレトリバーとその交配種が多く、日本では900頭以上の盲導犬が活躍しているのです。
今回は、そんな視覚障害を持つ方を支える盲導犬の一生についてご紹介します。
盲導犬はどのようにして盲導犬になっているのか気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
愛情いっぱいなパピーウォーカーさんとの生活
パピーウォーカーとは、盲導犬候補の子犬期間(約10ヵ月)に家族の一員として一緒に過ごすボランティアの方を指します。
主に、盲導犬訓練施設で繁殖して生まれた子犬が盲導犬候補になり、パピーウォーカーさんのもとに預けられます。
この時期にパピーウォーカーさんに愛情いっぱいに育てられた盲導犬は、人間と共存する「社会性」を身につけ訓練に馴染みやすくなるのです。
10ヵ月の期間しか一緒に過ごせないので、人間も犬もお別れの日がつらいですが、その期間はどちらにとってもかけがえのない時間になります。
犬をペットとして迎え入れたいけど安易な気持ちで受け入れたくないと考える方は、パピーウォーカーとしてボランティアに参加するのもよいでしょう。
パピーウォーカーのボランティアに参加する多くの家庭が、お子様がいる家庭です。
そのため、動物を飼ってお子様に様々なことを学ばせたいと考える方も多く参加しています。
盲導犬候補の子犬を迎え入れるには、リビングにゲージとトイレを置ける場所がある・先住犬がいない・子犬を一人きりにしないなどの様々な規定(盲導犬協会やボランティア団体によって内容が異なります)があります。
そして、それをクリアした家庭のみ盲導犬候補である子犬の家族になることが可能です。
パピーウォーカーさんのもとで過ごす間も盲導犬の基本訓練を行いながら過ごすので、最初は苦労しますが、やりがいのあるボランティアです。
トイレのしつけ・盲導犬協会で受ける講習・講習で習った訓練の実践などを行い、10ヵ月を過ごします。
犬を育てるということは、生半可な気持ちでは続けることができません。
毎日のご飯や散歩など、家族の手を借りないとできないことばかりです。
そういったことを毎日続け信頼関係や愛情が生まれていくので、このパピーウォーカーさんと過ごす時期はとても大切なのです。
盲導犬の訓練開始
パピーウォーカーさんのもとで過ごし愛情いっぱいに育てられた盲導犬候補は、訓練センターで訓練士から盲導犬になる訓練を受けます。
約1年間の訓練を続け、視覚障害の方を補助するためのマナーや作業を覚えていきます。
ネットの噂などで痛みを覚えさせる訓練があると言われていますが、そのような事実はありません。
また、盲導犬の訓練が厳しいという噂もありますが、訓練が厳しいのではなく盲導犬になる基準が厳しいのです。
パートナー様を快適に補助できるように、楽しみながら訓練するようなシステムになっていますので、そのような噂に惑わされないようにしましょう。
また、訓練では指示されたことだけではなく、盲導犬が自ら考えて行動できるような育て方をします。
その能力を最大限に伸ばす方法が、褒めて伸ばす方法です。
褒められると、盲導犬は意欲や自主的な行動を伸ばすことができると言われています。
訓練には、3つの訓練があるのでご紹介していきます。
基本訓練
基本訓練は人間の指示を聞く姿勢を育てる訓練です。
訓練士との遊びやコミュニケーションの中で、褒められる経験を積みます。
褒められる喜びを覚えた盲導犬候補はどういう行動をとったら褒められるのか期待するので、訓練士の指示を聞く姿勢が訓練されていきます。
誘導訓練
誘導訓練は、ハーネスを付けて人間を安全に誘導する訓練です。
・道の端によってまっすぐ歩く
・段差・曲がり角・障害物のある場所では一旦停止する
・公共の乗り物・エスカレーターやエレベーターの乗り降りの訓練
・飲食店・デパートでのマナー訓練
といった視覚障害を持つ方にとって重要な補助の訓練です。
訓練期間中にはテストが3回あり、それをクリアした盲導犬候補だけが最終訓練を受けられます。
テスト内容は
・訓練から1ヵ月で性格や健康面を評価
・訓練開始から2ヵ月後に、担当者がアイマスクをして街中を歩き基本的な誘導ができるか評価
・訓練開始から5ヵ月で、担当者以外の人がアイマスクをして訓練どおりの誘導ができるか評価
この3つのテストに合格すると、パートナーになる方の環境に合わせた訓練に切り替わります。
共同訓練
盲導犬を希望する視覚障害を持つ方と盲導犬候補が訓練センターで共同生活をして、実地訓練を行います。
実際に生活をして、訓練項目を力を合わせてクリアしていく大事な訓練です。
この訓練は4週間続き、じっくりと信頼関係を築きます。(2頭目以降は2週間~3週間)
パートナー様の訓練項目
・ご飯を与える
・ブラッシングやシャンプーをする
・排泄などのお世話
盲導犬候補の訓練項目
・市街地を歩く
・交通機関や飲食店利用など
主にこのような内容が、共同訓練です。
卒業、パートナー様との生活の開始
これらの訓練が終わり無事訓練センターを卒業した盲導犬候補は、視覚障害を持つパートナー様との二人三脚の生活が始まります。
盲導犬の活動期間は、約2才~約10才までの8年間で、パートナー様と生活を共にして信頼し支え合います。
盲導犬は、訓練したといえども完璧なロボットではないので、時間をかけてあたたかい関係を育てて行くことが大切です。
卒業しても終わりではなく、定期的なフォローやサポートを行うサービスが利用できるので、卒業後も安心して盲導犬と生活ができるでしょう。
しかし、パートナー様と盲導犬の生活が浅い間は、上手くいかないことや思わぬトラブルがあることも予想されます。
そんなときは、周りにいる人たちで助け合うことが必要です。
視覚障害者と盲導犬が困った様子のときは、ぜひ力を貸してあげましょう。
また、盲導犬が誘導を終えて休憩するときは、パートナー様の足元にいます。
盲導犬を興奮させたり、ちょっかいをだしたりしないように、注意が必要です。
盲導犬を刺激すると視覚障害者の方にも被害が及ぶ可能性もあるので、そっとしてあげてください。
お子様がいる方は、盲導犬について色々教えてあげる際に、こういったことも教えてあげるとよいでしょう。
視覚障害者と盲導犬が住んでいる地域のご理解と協力があることで、より多くの方が快適に暮らせる街になっていきます。
まとめ
最後まで愛情いっぱいに過ごします(引退後の生活)
盲導犬は健康に気遣った生活を送るので平均寿命が長く、引退後も平均5年以上生きると言われています。
約8年間の盲導犬生活を終えた犬は、そのままパートナー様に引き取られるケースもありますが、基本的には訓練所に戻されます。
しかし、人間に寄り添って生きてきた盲導犬は、訓練所で余生を過ごすより人間と一緒に暮らす方が幸せを感じるでしょう。
そのため、多くの引退した盲導犬は引退犬飼育ボランティアに引き取られ、条件をクリアした家族と生活を共にして余生を過ごすのです。
また、訓練で不合格になった盲導犬候補も飼育ボランティアの方に引き取られます。
このように、盲導犬に関わる犬たちの生活は、ボランティアの方の協力によって成り立っているのです。
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