現在、日本で飼われている犬の7割以上が小型犬といわれています。そのせいで、つい忘れてしまいがちなことといえば――。「愛犬が他人を怪我させるかもしれない」という危機感ではないでしょうか。
「うちの子は大人しい」「うちは超小型犬」という考え方はナンセンス!たとえ大人しい犬であろうと、吠え声に驚いたり飛びつかれた誰かが転倒して怪我をするかもしれません。そして体格の大きさに関係なく、犬には肉を引き裂くだけの鋭い牙が生えているのです。
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まずは被害状況を判断し、念を入れた対処を
愛犬が他人を怪我させてしまった時、多くの飼い主さんはパニックに陥りがちです。冷静でいることが難しい状況なのは理解できますが、だからといって対応を誤ると、事態はよりややこしくなるかもしれません。
心からの謝罪が無用なトラブル回避につながる
まずは、怪我をした相手にきちんと謝罪することが大切です。パニックのあまり「うちの子は普段大人しい」「いつもは飛びついたりしない」「そちらが勝手になぜようとした」などと口走る飼い主さんがいます。こういう場合、まず間違いなく事態は悪い方向へと転がることに…。
「下手に謝ると非を認めたことになる」という考え方はNGです。本来大きなトラブルにならなかったはずの事故が、こじれにこじれて裁判沙汰にまで発展することもあります。仮に相手が勝手に犬に近づいたせいで起きた事故だったとしても、愛犬がその人を怪我させた事実が消えるわけではありません。まずは心から謝罪することが、事態の収拾につながります。
軽傷でも病院で検査してもらい、再度のお詫びを
転倒事故の場合、怪我の状態によっては病院に行くほどではないこともあります。相手の方も「この程度なら大丈夫」と言ってくれるかもしれませんが、それでも必ず病院で診てもらいましょう。
なぜなら、時間が経過してから打撲や骨折が判明することもあれば、後になって高額な治療費を請求されるといった、トラブルの原因になる可能性があるからです。
忙しい、時間がないなど相手方の理由で病院に行くことを断られるかもしれませんが、ここは粘ってでも一緒に病院へ行ってもらうことをおすすめします。そして病院に行ったから終わりではなく、後日改めてお詫びに伺うことが大切です。
愛犬が他人に噛みついたらただちに保健所へ連絡を
愛犬が他人に噛みついてしまった場合、飼い主として対処すべきことがいくつもあります。
①まずは被害者と一緒に病院へ
相手の人が「たいしたことない」と言っても、必ず病院で診察してもらいましょう。そして後々トラブルにならないよう、必ず一緒に病院へ行くことが大切です。
「たいした傷じゃなかったはずなのに、多額の治療費を請求された」といったトラブルは、犬の飼い主が病院へ同行しないことでおこりがち。状況をきちんと把握するためにも、必ず病院へ一緒に行ってください。
②24時間以内に保健所へ届け出
犬が人を噛んだら、噛み傷の程度に関係なく24時間以内に保健所へ届け出しなければなりません。これは自治体が定めたルールであり、飼い主の「義務」です。
③48時間以内に診断書を保健所に提出
噛みついた犬を動物病院へ連れていき、「狂犬病にかかっていない」証明書(診断書)を発行してもらったら、速やかに保健所へ提出します。
④被害者にあらためて謝罪し、今後について話し合う
被害者の治療、保健所への届け出と必要書類の提出を終えたら、タイミングを見計らってもう一度きちんと謝罪に伺いましょう。噛みつかれた当事者は怒っていないのに、被害者の家族が「誠意がみられない」と騒ぎを蒸し返し、トラブルになるケースもあります。とにかく誠心誠意お詫びをすることが大切です。
個人賠償責任保険に該当がないか確認
怪我の程度が大きい場合、かなりの高額を支払うことになるかもしれません。もしも「個人賠償責任保険」に加入しているなら、損害賠償責任に問われた金額が保険金として支払われます。(上限の範囲内)
では、「個人賠償責任保険」に加入していない場合はどうすればいいのでしょうか。実は、個人賠償責任保険の多くは別の保険に「特約」としてついていることがほとんどです。
- ペット保険
- 自動車保険
- 火災保険
- 傷害保険
- 自転車保険
こういった種類の保険には、特約として賠償責任の補償がついていることがあります。なにがしかの保険に加入しているなら、どのような特約が付いているのか、一度しっかり確認しておきましょう。
まとめ
愛犬の可愛い姿を見ていると、咬傷事故や転倒事故は他人事のような気がしますよね。しかし、ワンちゃんと暮らしているすべての飼い主さんが、明日は「他人を噛んだ」あるいは「誰かを怪我させた」犬の飼い主になるかもしれません。
万が一愛犬が他人を怪我させてしまったら、心から謝ることがなにより大切です。しかし、だからと言って不当な要求に応じる必要はありません。きちんと状況を把握して正しく対処するためにも、最初から最後までしっかり被害者の方と向き合うことが求められます。