これまで何件も「逃げた飼い犬」による咬傷事故が起きています。中には被害者が死亡してしまった悲惨なケースも…。犬は骨を噛み砕ける牙を持つ生き物です。噛んだ犬が超小型であろうと深手を負うことは珍しくありません。ましてや超大型犬や闘犬に噛まれてしまったら、大怪我は避けられないでしょう。
ところがいまだに飼い犬を「うっかり」逃がしてしまう咬傷事故が起こり続けています。もしも逃げた飼い犬に噛まれてしまったら、私たちはどうすべきでしょうか。
目次
保健所へ連絡してさらなる被害を防ぐ行動を
逃げ出したと思しき犬に襲われたら、まずはどんな方法をとってでも身の安全を確保してください。そのうえで、出来るだけ早く保健所に連絡しましょう。恐怖のあまりパニックに陥ってしまい、どこへ連絡すればいいかわからなくなったら、110番でもかまいません。
次なる被害者を出さないためにも、まずは迅速に「危険な犬が逃げ出した」ことを伝える必要があります。さらには自分を噛んだ犬が「どちらの方向へ逃げたのか」、「どのような特徴の犬だったのか」など、覚えている限り詳細を伝えましょう。もしも知っている家の犬だった場合は、そのことも併せて知らせてください。
近所の人だから…という遠慮のせいで被害者が増えてしまったら、肉体の怪我だけではなく精神的な罪悪感まで背負うことになりますよ!
犬に噛まれたら軽く見える怪我でも病院での治療が必要
仮に噛まれた傷がたいしたことないように見えたとしても、必ず病院での治療が必要です。なぜなら犬の口内には様々な種類の菌が存在し、感染症を引き起こす可能性があるからです。
破傷風
破傷風菌は基本的に土の中に存在しています。もしも噛んだ犬が土をなめ、その土に破傷風菌が存在していた場合、犬の口内に移っている可能性が。その口で噛まれてしまうと、破傷風菌に感染する恐れがあります。
感染を防ぐ対処法は「破傷風ワクチン」接種です。
狂犬病
狂犬病は名前から誤解されやすいですが、犬だけが感染する病気ではありません。すべての哺乳類が感染する病気です。万が一人間が狂犬病に感染した場合、死亡率はほぼ100%。奇跡的に助かったとしても、重篤な後遺症は免れないでしょう。
感染を防ぐ対処法は「狂犬病ワクチン」接種――と言いたいところですが、そう簡単な話しではありません。近年日本では狂犬病の発症がないことから、対処法は捕まえた犬が狂犬病に感染していないかなどを確認し、状況を見ながらの判断となることがほとんどです。
パスツレラ症
パスツレラ菌は犬の20~50%が口内に保有している常在菌です。パスツレラ菌に感染しても比較的無症状で済みますが、問題は免疫力が低下している時。発症した場合「噛まれた部分の腫れと激痛」「リンパ節の腫れ」「皮膚の炎症」などが見られ、重症化すると「壊死性筋膜炎」「化膿性関節炎」「骨髄炎」「呼吸器感染」などの恐れがあります。
対処法は抗生物質の投与です。
バルトネラ症
通称「猫ひっかき病」のため、感染源は猫だけというイメージがありますが、犬から感染することもあります。バルトネラヘンセレ菌に感染すると、「脇あるいは足の付け根のリンパ節の腫れ」「湿疹」といった症状が見られます。
対処法は「鎮痛薬」「局所の温湿布」「抗菌薬」など、症状を軽くする治療です。
飼い主と話し合いのうえ相応の補償を求める
噛んだ犬の飼い主が判明したら、相応の補償を求めましょう。補償の内容は、治療にかかった医療費だけという単純なものではありません。
- 治療・通院にかかるすべての医療費
- 治療・通院に必要な交通費
- 咬傷事故がなかったら得られるはずの利益
- 怪我を負わされたことによる精神的な苦痛への慰謝料
- 後遺症が残った場合の慰謝料
いろいろあって頭が痛くなりそうですが、「飼い犬が他人を噛んで怪我をさせた」という事実は、「刑事責任」と「民事責任」を問われる重大事件。犬を逃がしてしまった飼い主に悪気がなかったとしても、簡単に済ませるわけにはいかないのです。
とはいえ、問答無用で「犬を殺処分にしろ!」ということではありません。きちんと加害者と話し合い、被害を受けた自分自身が納得のいく決着にたどり着くことが大切です。
まとめ
逃げ出した犬に噛まれて怪我をするのは御免ですが、自分の犬が逃げ出して誰かを怪我させてしまったら最悪です。犬を飼うすべての飼い主が「うちの犬が誰かを噛むかもしれない」と自覚して行動するのが一番ですが、人間とは気の緩みやすい生き物。咬傷事故が繰り返し起きても一向になくならないのがその証拠です。
もしも逃げ出した犬に噛まれて怪我をしたら、とにかくまずは警察や保健所に連絡しましょう。そのうえで噛まれた怪我を絶対軽く見ず、しっかり治療を受けることが大切です。