犬がうれしょんをする理由は、興奮・服従心・喜んでほしいなどが挙げられます。
急におしっこをされると飼い主さんは驚いてしまいますが、過剰な反応はうれしょんを誘発しやすいので避けたほうが無難です。
今回はうれしょんの原因やしやすい犬の特徴、対処法について解説します。
目次
犬がうれしょんをする3つの理由
うれしょんは「嬉しい」と「しょんべん」を組み合わせた造語とも言われますが、必ずしも嬉しいからおしっこをしてしまうわけではありません。
犬がうれしょんをする理由には、次の3つの理由が挙げられます。
- 嬉しい・楽しいのような興奮
- 服従心や恐怖心
- 飼い主さんに喜んでほしい
そもそも「うれしょん」とは、感情が高まったり、不安を感じたりすることが原因で無意識におしっこしてしまう状態。
トイレ以外の場所でおしっこを漏らしてしまう「おもらし(粗相)」とは違う現象です。
ここでは、犬がうれしょんをする3つの理由について、1つずつ見ていきましょう。
1.嬉しい・楽しいのような興奮
犬がうれしょんをする理由の1つ目は、興奮して膀胱の筋肉がゆるんでしまうことです。
嬉しかったり、楽しかったりして、自分でも感情を制御できないほどの興奮状態になると排尿することから、「興奮性排尿」ともいいます。
たとえば、帰ってきた飼い主に「おかえり」の挨拶をしている時や、遊びに夢中になりすぎてテンションが上がった時などに見られる姿です。
2.服従心や恐怖心
服従心を持っている時や恐怖心を感じている時にも、うれしょんする姿が見られます。
- 頭の上に手をかざす
- 大きな声を出す
- 人が近づいてくる
このような行動の後に見られるうれしょんは、服従心や恐怖心による服従性排尿でしょう。
服従心を持っている犬は、次のような姿勢を見せてからうれしょんをします。
- 耳を平らにする
- アイコンタクトを避ける
- 体を小さくし、伏せる
- しっぽを内側に巻く
- 寝転がりお腹を見せる
このような姿勢をとることで「攻撃しません」、「安全ですよ」といった気持ちをアピールしているのです。
3.飼い主さんに喜んでほしい
飼い主さんにとってトイレ以外でのおしっこは困りものですが、ワンちゃんには「喜ばれている」と勘違いされている可能性もあります。
犬にとって反応をもらえることは嬉しいこと。
うれしょんをした時に名前を呼ばれたり、かまってもらえたりすることで、愛犬の中では「うれしょん=喜んでもらえる」と勘違いします。
飼い主さんにもっと喜んでもらいたい気持ちから、うれしょんを繰り返す犬も少なくありません。
うれしょんをしやすい犬の特徴
うれしょんをしやすい犬にはいくつかの特徴があります。
特にうれしょんしやすいワンちゃんの一覧は次の通りです。
- 子犬(パピー)
- 小型犬
- 服従心や依存心が強い犬
- 臆病・精神的に不安定な犬
なぜうれしょんをしやすいのかを知り、対策の参考にしてくださいね。
子犬(パピー)|感情コントロールや筋肉の発達が未熟
生まれたばかりの子犬(パピー)は、次の2つの理由からうれしょんをしやすい傾向です。
- 感情がうまく制御できないから
- 膀胱の筋肉が未発達だから
まず、好奇心旺盛な子犬は、喜んだり、驚いたりと感情の変化が激しくなります。
感情がうまく制御できず、うれしょんにつながることもあるでしょう。
また、子犬はおしっこを溜めておく筋肉(膀胱括約筋)が未発達のため、成犬のように排尿をうまくコントロールできません。
そのため、成犬に比べるとうれしょんをすることが多いです。
子犬の時期のうれしょんは、成長とともに自然と改善されることが多いため、あまり気にせず様子を見れば問題ありません。
小型犬|体格が小さく服従心を表す機会が多い
犬のサイズによってもうれしょんしやすいタイプがいて、小型犬がそれに当てはまります。
小型犬は体格が小さいため、相手に対して「何もしませんよ」と服従心をアピールする機会が多い犬種のため、うれしょんしやすいのです。
また、室内で飼われることが多い小型犬は飼い主さんと一緒にいる時間が長く、嬉しい気持ちや楽しい気持ちを表現することも多くあります。
このような点からも、小型犬はうれしょんする確率が高いと言えるでしょう。
服従心や依存心が強い犬|おしっこを漏らす=服従のアピール
服従心や依存心が強い犬も、うれしょんをする可能性が高い特徴があります。
たとえば、飼い主さんに依存気味のワンちゃんは、少しの時間でも離れることがわかると「離れるのが怖い」と分離不安になり、うれしょんしてしまうことも……。
これは、飼い主さんへ対して服従や依存をアピールする方法が「おしっこをすること」という犬の習性なので仕方がありません。
服従心や依存心を持っていることを、本能的に飼い主さんに伝えているのです。
臆病・精神的に不安定な犬|恐怖心やストレスが原因
臆病な性格のワンちゃんや、精神的に不安定な状態の犬も、うれしょんの頻度が高くなりやすい傾向です。
気が弱かったり、何かしらのトラウマによって恐怖心を持っていたりする場合、ストレスなどが理由でうれしょんにつながります。
もし、これまでうれしょんをしたことがなかった犬が、急にうれしょんするようになった時は、何かしらのストレスを感じていることが考えられるでしょう。
大きなストレスは体調を崩すことにもつながるため、できるだけ早く原因を取り除いてあげてください。
ストレスが原因で下痢の症状も出た場合は、できるだけ消化に優しい食事を意識することが大切です。
下痢のときに与えたい食事は「犬が下痢の時の食事法とは?与えたい食材と下痢になる3つの原因とは」の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてくださいね。
うれしょんへの効果的な対処法は興奮させないこと!
うれしょんしやすい犬には特徴がありますが、当てはまらない犬でもうれしょんをすることがあります。
うれしょんに対処する際に意識すべきなのは、犬をかまいすぎず、興奮させないこと。
たとえば、うれしょんしやすい状況として、飼い主さんの帰宅のタイミングがあります。
ワンちゃんは飼い主さんが帰ってきただけで嬉しいのに、名前を呼ばれたり、撫でてもらったりすることでさらに興奮し、うれしょんにつながることに。
うれしょんに対処するには、飼い主さんも落ち着いた対応で冷静に犬に向き合いましょう。
うれしょんに過剰反応しない
遊んでいる最中や帰宅直後など、急にうれしょんされてしまっても過剰な反応はNGです。
予期せぬタイミングでのうれしょんで驚いてしまう気持ちはわかりますが、飼い主さんの反応によって犬は「かまってもらえた」と勘違いしてしまうでしょう。
- 犬の名前を大きな声で呼ぶ
- 「何してるのー!」と苦笑する
- わしゃわしゃと撫でまわす
このような反応をすることで「うれしょんすると遊んでもらえる」と認識すると、うれしょんがクセになってしまう可能性があります。
急にうれしょんをしてしまったとしても、飼い主さんは騒がず、過剰な反応を避けてください。
うれしょんに対して叱らない
うれしょんをやめさせようと、しつけのために強く叱ってしまうことがあるかもしれませんが、叱ることは逆効果。
飼い主さんが怒って興奮状態になると、犬も興奮が収まらなくなります。
怒り方によっては、遊んでもらえる意味のある行動だと理解して、さらなるうれしょんにつながる可能性もあるでしょう。
また、きつく叱ったり、罰を与えたりするとワンちゃんは萎縮します。
怖がって服従の姿勢をとることにより、服従性排尿の原因になる悪循環に陥ることも……。
うれしょんはお漏らしではなく、無意識に出てしまっているため、叱っても直るわけではありません。
決して叱らず、冷静に掃除する姿を見せることで「うれしょんしても良いことはない」と覚えさせましょう。
「おすわり」や「伏せ」で興奮を抑える
犬のうれしょんをやめさせることは難しいですが、うれしょんのきっかけとなる興奮をトレーニングで抑えることはできます。
トレーニングといっても、やることは3つです。
- うれしょんするタイミングを把握
- うれしょんしそうになったら行動を指示
- 上手にできたらご褒美を与え褒める
まず、うれしょんしそうなタイミングで、おすわりや伏せのような特定の行動をとるように指示。
うまく号令に従えたらご褒美におやつなどを与えて褒めてあげます。
このトレーニングを繰り返すことで、少しずつ落ち着いていられるように変化するはずです。
興奮を別の反応に置き換えることにより、うれしょんにつながる興奮反応を抑えられるためです。
また、「興奮しないとおやつがもらえる」と学習することで、過度な興奮も抑えられるようになるでしょう。
飼い主以外へのうれしょんは落ち着かせる時間を作る
人見知りをしない犬や、逆に怖がりな犬は、飼い主以外の人に対してうれしょんしてしまうことがあります。
相手が犬好きでワンちゃんにかまってしまうと、うれしょんを誘発することもあるでしょう。
来客時にうれしょんの心配がある場合には、クレートやケージで待機させ、落ち着くのを待ってから対面させるのがおすすめです。
また、興奮しすぎたら距離をコントロールできるよう、リードをつけておくのもいいでしょう。
どうしても直らない場合は「犬用オムツ」が役に立つ
犬のうれしょんの回数が多かったり、どうしても直らなかったりするのであれば、犬用のオムツを活用するのもアリ。
犬用のオムツにもいくつか種類があります。
- マナーバンド
- マナーベルト
- マナーパンツ
- マナーウェア
商品によって名前や形状が異なるので、ワンちゃんに合うアイテムを選びましょう。
つけっぱなしで1日中過ごすのは蒸れてしまう原因になります。
1日に数回つけ替える・出かける時だけ使う・うれしょんをしそうなタイミングを見計らって履かせるなどの工夫をしてください。
また、念のために皮膚に異常がないかどうかも忘れずに確認しましょう。
うれしょん以外の理由かも?考えられる排尿の理由
うれしょん自体は病気ではないので問題ありません。
しかし、頻度が高すぎる場合には、うれしょん以外の理由で排尿している可能性も。
ここでは、次のような原因をご紹介します。
- トイレトレーニングが未完了
- マーキング行動をしている
- 膀胱炎を発症している
- ホルモン反応性尿失禁になっている
もし、排尿時に辛そうに見えたり、尿に血が混じったりしているようであれば、動物病院を受診するといいでしょう。
トイレトレーニングが未完了
まず、単純にトイレトレーニング(トイトレ)が完了していない可能性があります。
うれしょんだと思っていたものは通常の尿であり、きちんとトイレで排泄できていない状況です。
この場合は、トイレで排泄できるようにしつけていくしかありません。
無意識にしてしまううれしょんと違い、尿意を感じている場合には地面のにおいを嗅ぐといったおしっこをする前の行動が見られるはずです。
トイレの場所の見直しをしたり、排泄間隔を確認したりすることで、排泄の失敗を減らせるでしょう。
マーキング行動をしている
興奮する様子や怯えている様子がないにも関わらず、うれしょんをするのはマーキング行動であるケースもあります。
自宅の中でもマーキング行動をしているのは、飼い主との信頼関係に少し不安があるのかもしれません。
毎日優しく声をかけたり、号令に従えたら褒めておやつをあげたりといった、ポジティブなコミュニケーションを心がけることで改善されていくでしょう。
膀胱炎を発症している
うれしょんの頻度が明らかに多いようであれば、泌尿器系の病気の可能性があります。
代表的な病気が膀胱炎であり、肛門と尿道が近いメスの犬に起こりやすい傾向です。
興奮していないのに自然とおしっこが出てしまったり、触れただけで排尿してしまったりするようであれば、病院で検査をしたほうが安心でしょう。
おしっこの状態について、色や量、においや回数などの情報を記録して、受診時に持参すると診察の際にスムーズです。
ホルモン反応性尿失禁になっている
避妊手術を終えたメス犬や、去勢手術をしたオス犬に見られる「ホルモン反応性尿失禁」。
手術をしたことで血液中の性ホルモンの濃度が下がり、おしっこの排出をコントロールする尿道括約筋がゆるんでしまうことで、無意識のおもらしにつながります。
うれしょんと間違えやすい症状ですが、手術後かどうかで判断できるでしょう。
この症状は、手術のミスや後遺症ではなく、ホルモンバランスが崩れたことが原因の失禁。
動物病院を受診し、ホルモン補充の薬を処方してもらい、尿道を閉める筋肉を回復する治療をおこないます。
うれしょんは冷静に対応して改善を目指そう
うれしょんは、トイレに間に合わずにお漏らしをしてしまうこととは違い、感情の高まりや不安を感じることで無意識におしっこしてしまうことをいいます。
体が未発達な子犬や、服従心を表現する機会の多い小型犬、精神的に不安定な犬など、ストレスを抱えやすいワンちゃんに見られる症状です。
ただし、うれしょんは病気ではないため、置き換えトレーニングなどで興奮を抑えてあげることで改善することもあります。
過剰に反応して余計に刺激しないように気をつけながら、うれしょんの改善を目指しましょう。